【法人向けセキュリティソフトの比較表】
筆者の経験に基づく意見とはなりますが、代表的な法人向けセキュリティソフトの特徴を紹介しています。それぞれの特徴にはカテゴリを設けており、カテゴリごとに「比較詳細記事」も用意しているので、詳しい情報をご覧になりたい方は、そちらの記事も併せてご覧ください。
なお、記事作成にあたり著者の経験以外にも「第三者機関のテストや検証」、「オンライン上で公開されている情報」なども参考としています。
【コストとサポート】の比較まとめ
「価格」は最もわかりやすい指標であり、そのため、導入製品を選ぶ際にもっとも重要視している企業も少なくありません。そのため価格が安いものを選びがちですが、費用という意味ではトラブル発生時の人件費を考えることも重要です。そこで、ここでは人件費に直結しがちな「サポート」を軸に、比較・評価しています。
セキュリティソフトというのは社内の大切な資産を守るためのものです。価格だけを重視して自社に合わない製品を導入しても、きちんとした情報セキュリティを担保することはできません。ただ実際にどの製品を導入するのかを最終的に意思決定するのは経営者です。そのため、稟議書を作成する際には経営者目線での切り口も必要となります。ここでの資料を「経営者目線で考える」ための情報としてご活用ください。
このカテゴリでは、「Canon ESET Endpoint Protection」に一番低い点数をつけました。価格は比較的安価なのですが、サポートの質の面で大きくポイントを下げてしまった形です。
本記事においては、価格という要素を特別扱いにはせず、あくまでも他の様々な要素と同列で扱っています。したがって、総合点には皆さんが重視しているほど価格によるメリットは反映されていないかもしれません。
【マルウエアの検出力】の比較まとめ
マルウェアの検出はセキュリティソフトにおいて最も重要な役割であると言っても過言ではありません。そのため、6製品すべてが高いレベルで横並びとなっています。ただし、IT業界など、より高度なセキュリティが求められるところでは、どの要素を重要視するかの判断が必要になります。
一番の高評価をつけた「Kaspersky Endpoint Security for Business」は、先進的な技術や独自のシステムを積極的に採用することで常に高い検出力をマークしてきました。高いレベルでの検出機能を求める技術者にはお勧めの製品です。
ただし、昨今はどのセキュリティソフトも高い次元で横並びの状態にあり、特別高い検出力を求めるのでなければ、どの製品を選んでも大差はないのが現状です。
【セキュリティソフトの軽快さ】の比較まとめ
動作速度が遅いと業務に支障が出る可能性があります。そのため、他の社員からクレームを出さないためにも動作速度という要素を検討することは重要と言えるでしょう。
点数としてはほとんど横並びですが、かろうじて「Canon ESET Endpoint Protection」が一番高い評価を獲得しています。最低点をつけたのは「McAfee Security for Business」です。しかし正直なところ、他の製品と比べてそこまで差があるものではありません。
メーカーの企業努力のおかげもあり、「セキュリティソフトが動いていると仕事が進まない!」ということは、最近ではほぼないと言えるでしょう。
ただし、特定のプログラムを認証しなかったり、起動するたびに確認のダイアログが出てきたり、ということはあり得ます。自社で開発したプログラムや、一般的ではないソフトウェアを多く使っている企業では注意するようにしましょう。
【クラウド管理】の比較まとめ
「社内での自分の立ち位置」や「仕事の進め方」などによって、適切なセキュリティソフトの管理方法は異なります。適切な管理方法を選択することによって、最も恩恵を受けるのは、セキュリティソフトを保守・運用・管理していくセキュリティ担当者自身です。
社外に出る機会が多い兼任のセキュリティ担当者の場合には、外出先でも管理画面にアクセスできるか、集中管理できているかというところが非常に重要なポイントになります。
ここでは便宜上、ブラウザベースで管理ができるもの(つまり、クラウド上で管理ができる製品)を高評価にしましたが、セキュリティ担当者の働き方次第では、ブラウザベースでの管理は必要ない可能性もあります。
以上を踏まえた上で今回の結果を見てみると、評価はほぼ横ばい、ととらえて差し支えないでしょう。
大切なのは運用者である自分が、実際に使いやすいかどうかです。導入の前には必ず候補に入れたセキュリティソフトの体験版を取り寄せて、試験運用してみることが大切です。
【サポートの対応力】の比較まとめ
先ほどの項目ではサポート体制がどれだけ充実しているかについて述べました。ここでは「サポート体制の質」や「メーカーが用意している教育コンテンツの充実度」に焦点をあてサポートについてより深く評価しています。
セキュリティソフトを管理していると、必ず「不具合」や「わからない部分」が出てきます。この時、電話で問い合わせてもなかなかつながらず、つながったとしても関連部署をたらい回されるような対応をされたらどうでしょうか?時間と手間が無駄にかかってしまいます。
「サポート体制の質」や「教育コンテンツの充実度」というのは、セキュリティ担当者の業務量に直結する部分なので、是非とも意識するようにして下さい。
ここでは「トレンドマイクロ ウィルスバスター ビジネスセキュリティサービス」が他を引き離して高得点をマークしています。きめ細かいサポート体制を展開しているところが評価の理由です。
セキュリティソフトの総合的な比較まとめ
最終的に点数を合計すると、
1位:トレンドマイクロ ウィルスバスター ビジネスセキュリティサービス(128点)
2位:Symantec Endpoint Protection(124点)
3位:McAfee Security for Business(117点)
このように、いわゆる御三家が上位を独占する形となりました。そこからKaspersky Endpoint Security for Business、Canon ESET Endpoint Protection、F-Secure プロテクション サービス ビジネスと続いています。
あらためて比較表を見ると、御三家とそれ以外とでは、ポイントに差があります。この明暗を分けた要素を探してみると、「サポートの対応力」であることが分かります。サポート体制の質や教育コンテンツの充実度によって順位が分かれた形となりました。
また、この結果はセキュリティソフトを選ぶうえでとても重要な事柄を示しています。それは、「セキュリティソフトの軽快さ」や「マルウェアの検出力」に差がなくなった現状では、「サポートの質」や「教育コンテンツ」こそが差別化のカギになるということです。
何かトラブルやインシデントが発生した際、直接対処に当たるのはセキュリティ担当者です。提供される情報が豊富にあれば、その分自力で解決できる可能性は高まります。もし解決できなかったとしても、サポートの対応が迅速であれば解決までの時間を短縮することができますから「教育コンテンツの充実度」や「サポートの質の高さ」というのはとても大切なことなのです。
そういった意味では、とりわけ日本での活動が活発であり「サポートの対応力」ではほぼ満点のトレンドマイクロ社の製品は、セキュリティ担当者にとって魅力的な選択肢と言えるでしょう。