昨今、企業において業務中に最も使用されているソフトウェアは何かご存知でしょうか。
メールソフト? ミーティングツール? クラウドデータ共有ソフト? それともCRMソフト?

… … 実はいずれも誤りで、最も使用されているソフトウェアは間違いなく「インターネットブラウザ」です。
クラウド環境において様々な機能が使用できるようになった現在、インターネットブラウザこそが個人・法人関わらず、もっとも利用されているソフトウェアになっています。

インターネットブラウザ(以下ブラウザ)には多くの種類がある一方、それぞれの違いをしっかりと理解している利用者はそれほど多くありません。
コンピュータに最初から入っているブラウザや、ソフトウェアに指定されているブラウザなどを、ただ惰性的に使用しているユーザが大半といえます。

さて、そのようなブラウザに流れているデータを、どれだけ把握できているでしょうか。
ウェブメールなどを活用していれば個人情報が、ウェブメールを使用していなくても、最近では請求書やファイルやり取りなどの業務を行う上で様々な情報がブラウザを経由して社外のネットワークに出て行くことになります。

そのため、情報セキュリティの面から考えるとブラウザ選定は非常に重要なポイントですので、セキュリティ面から見た「企業におけるブラウザの選択肢」を考えてみましょう。

ブラウザ使用時の懸念点

企業でブラウザを利用するにあたり、十分な検討がされているかというと、ほとんどの場合において「指定のブラウザを使用する」ことだけが伝わっており、詳細に検討されていることはないといえます。

デフォルトブラウザという意味で、WindowsであればInternet ExplorerやMicrosoft Edgeを、MacであればSafariを利用している企業がほとんどでしょう。

とはいえ、セキュリティソフトをインストールすることにより、利用しているブラウザにプラグインなどの機能が追加され、情報が保護されるようになっている場合が大半であります。
ただ、その結果としてブラウザが重くなってしまって業務効率が下がるなどのデメリットがあることも事実です。

また、最近ではスマートフォンのブラウザも無視することはできません。
ブラウザによってはサービスが正しく動かず、業務が遂行できない… … といった事例も数多くありますのでセキュリティ担当者、ひいてはシステム担当者は事前に業務にあわせて様々な環境で確認をする必要があるのです。

ブラウザのシェア

個人・法人を問わずに世界のブラウザシェア状況を見てみると、そのほとんどがChrome一色になっています。
次点にモバイルブラウザとしてのChromeが来て、その下にSafari、Firefox、Internet Explorerが並んでいます。

国内に目を向けてもこの傾向はほとんど変わりません。ただChromeが大半を占めることに変わりはありませんが、国内では次点にInternet Explorerとなっており、少々特徴的な傾向はあります。

それぞれのブラウザの特徴

ここでは代表的なブラウザの特徴をご紹介いたします。

・Chrome (Google Chrome)
検索エンジンのみならず、インターネットサービスを利用する上で誰もが利用しているであろうGoogleが開発しているブラウザです。
その描画を担っているエンジンはChromiumと呼ばれ、オープンソースで提供されています。
現在ではユーザがストレスなく使用できるよう自動アップデートや情報管理が整っており、また動作も機敏なため、第一の選択肢として挙がるブラウザです。
プラグインによって様々な機能が導入出来るため、広告ブロックといったカスタマイズも容易です。
一方、タブを呼び出すためにコンピュータのリソースを取るため、気付いたらコンピュータの動作が重くなっていることがありますが、タブを開きすぎなければこの事態は避けられます。

・Safari
AppleのMacやiPhone/iPadなどでデフォルトにて導入されているブラウザです。
AppleのOSに最適化されているため、それらのシステム上で動作させる際の安定性においては他ブラウザの追従を許しません。
一方でWindowsへの親和性は低く、ソフトウェアのダウンロード・サポートも打ち切られています。
こうした側面から、Apple機器専用のブラウザと言えるでしょう。

・Firefox
第3のブラウザと呼ばれ、拡張性の高さやアップデートのスピードでは他のブラウザに引けを取りません。
スクリプトに熟達していれば独自機能を追加することも容易で「やりたいことは全部やれる」ブラウザとして一定の支持を集めています。
他方、少々マニアック向けな側面があり、アップデートのたびに機能が変わることがありますので、企業で均一な環境を用意するという点においては、あまり向いていないといえます。

・Internet Explorer
Microsoftが開発したブラウザで、Windows標準のブラウザとしてインストールされています。
古くからのWEBサイトやシステムではInternet Explorerでないと動作しない、というサイトもあるため日本においては現在も広く利用されているブラウザです。
ただ、最新のグラフィックスタイルを完全にサポートしているわけではないため、サイトによってはデザインがくずれて表示されることもままあります。
ユーザ数が多い一方でアップデートが遅く、また後述のMicrosoft Edgeが出たため、一部の公的機関等のサイトの利用以外では、企業での使用の検討には値しないといえます。

・Microsoft Edge
先述のInternet Explorerが古くからのつぎはぎの結果として、最新のスタイルに十分に対応できくなったため、Windows10以降にMicrosoftが新しく標準ブラウザとして用意したブラウザがMicrosoft Edgeです。
最初からインストールされている点と、軽量で動作も速いということで、現在ではそれなりの支持を得ています。
ただし、拡張性が少ないため機能の追加という点では少々難点があります。
なお、Edgeは次期開発ロードマップにおいて、先述のChromiumエンジンを取り込むことを発表しています。

モバイル(スマホ)の観点で見たブラウザセキュリティ

企業においてスマートフォンの利用の場合においてはChromeとSafariの二択になっており、ほぼそれ以外の選択肢は存在しないと言えます。
OSがAndroidなのか、iOSなのかによって決定してしまっているといっても過言ではないでしょう。

昨今のモバイル向けセキュリティソフトは上述の2つのブラウザにまず間違いなく対応しているため、自社の方針として、Apple系を選択しているのか、他のスマートフォンを導入しているのかによってある程度の利用ルールを定めるのが一般的です。

なお、自社で使用しているセキュリティソフトや利用サービスのアプリが対象のOS向けに配信されているか、といった点の方が、ブラウザの選択よりも先に挙げられることが多い傾向にあります。

まとめ

実際のところ、業務においてブラウザの選択肢というのは形骸化し、無いに等しい状態となりつつあります。
WindowsであればChrome、AppleであればSafari。それらにセキュリティソフトを追加して管理を行う場合がほとんどです。
いずれにせよ、セキュリティを高めるのであれば、セキュリティソフトを正しく導入し、管理することが重要となります。

また、コンピュータの利用に際して、指定のブラウザ以外の利用に関する正しいルール作りもセキュリティを高める重要なポイントです。
ブラウザはもっとも業務で使用するソフトである点を十分に理解し、正しい運用ルールを策定しましょう。